河原城風土資産研究会
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古事記の倭ごころ

―ふることふみ(古事記)の倭(やまと)ごころ― その弐拾【神話の神々vol.6 天の石屋戸(あめのいわやど)】

2013年6月23日

みなさん、こんにちはー。本当に本当にお久しぶりですぅ―!!!ミ(≧u≦)彡

連日の真夏日に今年は空梅雨かと心配してましたが、やっと降りましたねー。しかし、降れば降ったで集中豪雨。それこそ、いい塩梅で降ってくれないものかと思うのでした。

さて神話の神々vol.6は天の石屋戸(あめのいわやど)の話です。

勝手に自分が勝ったと思いこんで、嬉しくてしょうがない建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)は調子にのって暴れまわります。

田や畑の畔を壊し、神聖な宮殿には大便をまきちらし、皆を困らせました。姉神の天照大御神(あまてらすおおみかみ)は誓約(うけい)で弟が正しかったことで叱ることが出来ず須佐之男命をかばっていましたが、須佐之男命の悪さはエスカレートするばかり。馬の皮をはいで機織り(はたおり)の仕事をする小屋に投げ込んで、驚いた機織りの女の子は死んでしまいました。それを見た天照大御神は、弟を叱れない自分に我慢が出来なくなり、とうとう天の岩屋戸に入ったまま出てこなくなりました。

さあ大変、天上界と昼の世界を司る天照大御神が隠れてしまったので、世界中が真っ暗になってしまいました。これは一説には日食を意味するも、または一年で一番太陽の光が弱まる冬至の頃を意味しているもので、古代ではこのような森羅万象自然の現象に神の存在を重ね合わせて考え、特に天体に関する自然現象には畏敬の念を感じ、神の御技ととらえていました。また、石屋戸は古墳をイメージさせ、太陽・神天照大御神がそこに入り闇の世界が訪れ、再び現れるのは「死と復活・再生」の信仰を感じさせます。そして、天照大御神は機織りで神御衣(かむみそ=神に献る衣服)を織り、神田で稲を育てるなどのくだりからも穀物が毎年死に春に新たな生命を芽吹かせる「死と復活・再生」を繰り返すものへの信仰が見て取れます。

さて、神様たちは困りはてました。天照大御神を天の岩屋戸からお出ましいただくために天つ神を天の安河(あめのやすかわ)に集めて作戦会議を開きました。神様たちの中で一番頭のいい思兼神(おもいかねのかみ)が、みんなに指令を出します。

まずは常世の国の長鳴き鳥(ニワトリ)を集めて岩屋戸の前で鳴かせ、天の金山から採った鉄で伊斯許理度賣命(いしこりどめのみこと=作鏡連[かがみづくりのむらじ]の祖神)に鏡を作らせ、玉祖命(たまのおやのみこと=玉造部の祖神)に勾玉を作らせました。天児屋命(あめのこやねのみこと=中臣連[なかとみのむらじ]の祖神)と布刃玉命(ふとだまのみこと=忌部首[いんべのおびと]の祖神)には儀式(天の香具山の牡鹿の骨で占い、賢木[さかき]を根ごと掘り、それに勾玉や八咫鏡[やたのかがみ]をつけ捧げものとし、祝詞を唱える)を取り仕切らせ、一番力持ちの天手力男神(あめのたぢからおのかみ)には岩屋戸の扉に手をかけ隠れさせ、一番踊りの上手い天宇受賣命(あめのうずめのみこと=猿女君[さるめのきみ]の祖神)は岩屋戸の前に桶を逆さに伏せ、その上で乳房をかき出し、裳の紐を ほと(陰部)まで押し下げ、神がかりして踊ると八百万(やおよろず)の神々は一斉に笑いました。

なんだか外が騒がしいのを不思議に思って、天照大御神は外の神様に聞いてみました。すると、「あなたより素晴らしい神様が現れたので、みんなでお祭しているところです。」驚いた天照大御神は岩屋戸の扉を少しだけ開けて覗いてみました。楽しそうに踊る天宇受賣命や大笑いしている神様たちがいて、目の前には本当に美しい女神さまが立っていました。でもそれは鏡に映った自分の姿でした。その瞬間、天手力男神が扉をガッと開け天照大御神は外に引っ張り出され、二度とは入れないように扉を閉じ注連縄(しめなわ)を張りました。(これが神域との境界線としての注連縄の起源です)こうして闇に支配された世界は再び光(生命)を取り戻しました。

この神話こそが、宮廷で新嘗祭(にいなめさい=収穫祭にあたるもので、宮中祭祀の中で一番大きく大切なもの:ちなみに天皇が即位して初めての新嘗祭を大嘗祭[おおにえのまつり:だいじょうさい]という)の前日に行われる鎮魂祭儀の起源として語られています。旧暦の11月(現在の12月下旬)冬至の頃は一年で最も太陽の光が弱く、また日も短くなり太陽神・天照大御神の子孫である天皇の力も衰えると思われていました。そこで天皇の魂に活力を漲らせるために行う儀式として飛鳥時代・皇極(こうぎょく)天皇の御代(=中大兄皇子[なかのおおえのおうじ]らが宮中で蘇我入鹿(そがのいるか)を討ち、翌日、入鹿の父の蘇我蝦夷(そがのえみし)が自害する【乙巳の変[いっしのへん]・大化の改新】など政治的にも大事件・改革が起きた時代から始まったとされています。

さあこれで一安心と八百万の神たちは胸を撫で下ろしましたが、須佐之男命を許しておくわけにはいきません。天照大御神と神たちは須佐之男命にどんなお仕置きをするか相談しました。そして、須佐之男命の持っているたくさんの宝物を全部とりあげ(「…千位の置戸[ちくらのおきど=台の上に載せた たくさんの贖罪の品物]…)、ヒゲと手足の爪を切り(「…切り祓いしめて…[髭や爪を切ることは身体の一部を使ってする祓いの一種で古代の刑罰と思われる]」)、高天原(たかまのはら:たかまがはら)から地上に追放することにしました。

このお仕置きをどう見るかも いろいろと研究がされていることで、一般的には、再生の象徴である爪や髭を切るということは生命力を奪われて追放されるということで、天上界での乱暴狼藉がいかに罪深いものかを表しています。駒澤大学・古代史研究の瀧音 能之(たきおと よしゆき)氏は「古事記と日本書紀でたどる日本神話の謎」の中で『贖罪の品物を差し出したうえに、髭と手足の爪を切られ、挙句は追放とは一度の罪に対し三度も罰を与えられているのはナゼか?…大祓詞(おおはらえことば:、神道の祭祀に用いられる祝詞の一つ)の影響ではないか。…延喜式の中に残る現在の大祓詞の中に出てくる罪の分類は“天つ罪”と“国つ罪”の二つ分けられ、その罪に対する罰則も決められている。… 須佐之男命の犯した罪はまさに天つ罪にあたる。……(中略)……また、生命力を奪われて追放されるということは、つまり死者として追放されたことになる。奇妙な感じだが、もともと母神・伊邪那美命(いざなみのみこと)に会いに黄泉の国に行きたいと泣いていたのだから、ふさわしい結末といえる。……しかし、大祓詞にあるように千位の置戸で贖罪を果たし禊は終わるはずなのに死者として追放されるとは、千位の置戸がまったく効果がないとも取られてしまう。……(結論として)記・紀神話の中での須佐之男命の役割。須佐之男命は高天原から追放され黄泉の国の支配者にならなければいけないという時代背景があったのではないか。…(後略)』このように読み解けば、とても自然に、そして必然的に須佐之男命への厳しい処分が理解できそうですよね。(*U_U*)

さあ、いよいよ神話の舞台は天上界から地上へと移ります。どんなお話しが待っているのか、続きは、次回「八岐大蛇(やまたのをろち)」でお話します。それではまた お会いしましょう~(*^▽^*)ノシシ (おっちー)


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